「建築一式って何の工事なの?」「建築一式の許可があれば何でも工事できるんでしょ?」このような質問を建設業者様からされることがあります。
たしかに左官工業や板金工業などであればイメージはつきやすいかもしれませんが、建築一式と言われてもイメージがつきにくいですし、一式というからには何でもできそうな感じはしますよね。
特にこれから建設業許可を取得しようとお考えの方は建築一式の内容をしっかり理解しておかないと、場合によっては知らず知らずのうちに建設業法違反をしてしまっていた…なんてこともあり得ますので是非、参考にしていただければと思います。
建築一式工事とは
建築一式工事について宮城県のHPを見てみますと
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事で、その例示として建物の新築工事、増設工事、建物の総合的な改修工事等、一式工事として請負うもの。(建築確認を必要とするもの。)とされていています。
考え方としては
※一式工事とは…
工作物の建設を一体的に請負い,総合的な企画,指導,調整を行う工事を指します。
そのため,建築一式工事に該当するのは原則として元請で請負う工事に限られます。
なお,建築一式工事は必ずしも2以上の専門工事が組合わせであることが要件ではなく,工事の規模,複雑性等からみて個別の専門工事として施工することが困難なものも含まれます。
ということで「元請の立場で複数の建設業者が携わる大規模な工事を総合的にマネージメントしながら行う工事」が建築一式工事となります。
そのため建設業許可という面で考えると元請の立場で大規模な工事を総合的にマネージメントしながら行う予定がない場合は建築一式の許可を取得する必要はありません。
また、冒頭でも触れましたが建築一式工事の許可さえあれば何でもできるのか、という疑問の答えはできないという事になりますね。
建築一式の許可が必要な工事
建築一式に該当するような工事を行うとしても、それが軽微な工事の場合には許可の取得は必要ありません。
軽微な工事とは以下のような工事になります。
- 1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)
- 請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延面積が150平方メートル未満の工事(主要構造部が木造で、延面積の2分の1以上を居住の用に供すること。)
工事の中には建築一式に当てはまるのかどうか判断が難しいものもあります。
例えばビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は消防施設工事ではなく、建築物の躯体の一部の工事として建築一式工事又は鋼構造物工事に該当しますし、リフォーム工事も複数の建設業者が携わることが多いので建築一式工事に該当しそうですが、仮にそのリフォームが壁紙の交換だけであれば内装仕上工事になります。
判断に悩んだ際には一度、行政に相談することをオススメします。
専任技術者について
ここまで建築一式工事とはどのようなものなのか、どのような工事を行う時に建設業許可が必要なのかについて解説を行ってきましたので、実際に許可の取得を目指した時に問題となることが多い専任技術者についても触れておきます。
専任技術者となるためには
- 一定の国家資格を有している
- 指定学科+実務経験
- 実務経験10年以上
このいずれかの要件を満たす必要があります。
一定の国家資格を有している
この国家資格により専任技術者の要件を満たす方法が一番確実です。
その国家資格は
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(建築)
- 1級建築士
- 2級建築士
となっております。
なお、特定建設業許可の場合は1級建築施工管理技士と1級建築士が国家資格での要件を満たすことになります。
指定学科+実務経験
建築一式工事の専任技術者の要件を満たす指定学科は建築学又は都市工学に関する学科となり、実務経験年数は
- 高校卒業後5年以上
- 大学卒業後3年以上
- 専門学校後5年以上
- 専門学校後(専門士又は高度専門士)3年以上
が必要となります。
この実務経験は証明者が建設業許可を取得しているかどうかによって証明方法が変わってきますが、取得していない場合は工事請負契約書や注文書等の証明資料を確認することになります。
さらに証明資料の確認は各都道府県によって求められる量が異なっており、宮城県の場合は12ヶ月×必要年数なので高校卒業の場合は60ヶ月分の証明資料を準備する必要があります。
専門士・高度専門士について
先ほどの解説を見ていると「専門士って何?」と思われた方もいらっしゃるかもしれないので、参考までにどのようなものなのかについても触れておきます。
専門士・高度専門士共に文部科学大臣が認めた専門学校の修了者に対して与えられる称号になり、どの専門学校を卒業すれば取得できるかについてはこちらをご覧いただければと思います。
実務経験10年以上
一定の国家資格を有していない場合、指定学科を卒業していない場合は建築に係る工事に関し、10年以上の実務経験が必要とされています。
この実務経験は証明者が建設業許可を取得しているかどうかによって証明方法が変わってきますが、取得していない場合は工事請負契約書や注文書等の証明資料を確認することになります。
さらに証明資料の確認は各都道府県によって求められる量が異なっており、宮城県の場合は12ヶ月×必要年数なので120ヶ月分の証明資料が必要となります。
まとめ
今回は建築一式について解説を行っていきました。
よく建設業者様から質問をされるものでもありましたので、今回のコラムが少しでもお役に立っていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。