建設業許可について

仕事の幅を広げたいから建設業許可が欲しい」「元請から建設業許可の取得を促されているなど様々な理由から建設業許可の取得を検討される方がいらっしゃいます。
しかし、許可申請という普段やり慣れていないことをやるとなるとなかなか重い腰が上がらないものです。
そしていざ申請手続きを行おうと思っても、「どんな要件をクリアしなくちゃいけないかわからない」「建設業法の意味が理解しにくい」など多くの壁にぶつかってしまう方も少なくありません。
ということで今回はそんな建設業許可を新たに取得しようとお考えの建設業者様向けに入門編的な位置づけとして建設業許可について解説を行っていきます。

目次

建設業法とは

まずはじめに建設業法について触れていきましょう。
建設業法第1条の目的を見てみますと

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする

と記さています。
これによって「建設工事の適正な施工」「発注者の保護」「建設業の健全な発達促進」が守られ、最終的には公共の福祉の増進となることが目的とされているわけですね。

建設業法の対象となる人は?

これについては「建設業許可を取得している業者が対象なんでしょ?」「下請けだから関係ないんじゃないの?」などたまに誤解をされている方がいらっしゃいます。
建設業許可を取得しているかどうかというのは関係ありませんし、建設業法第1条の目的だけ見ると下請けについては触れられていませんが実際、建設業法の中身には下請けを保護するような規定が多く設けられておりますので下請けの方も対象となっています。
そのため建設業に携わるすべての者が対象となっております。


建設業許可が必要となる者について

軽微な工事を除いて29種の建設業に定められている工事を行おうとする者は国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければなりません。

軽微な工事とは

では、軽微な工事とはどのような工事のことを指すのでしょうか。
軽微な工事は建築一式か、建築一式以外かで変わってきます。

建築一式工事の場合

建築一式工事とは「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」とされており、建物の新築工事、増改築工事などを一式として請負うもの、とされています。
イメージとしてはショッピングモールの新築工事などを元請けの立場で全体をまとめながら複数の工事を組み合わせて行う工事、といったところですね。
たまに「建築一式の許可を持っていればなんでも工事できる!」と間違った解釈をされている方がいらっしゃるので、注意をしましょう。

建築一式工事での軽微な建設工事は

  • 1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)
  • 請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延面積が150㎡未満の工事(主要構造部が木造で、延面積の1/2以上の居住の用に供すること。)

となっております。

建築一式工事以外の建設工事の場合

建築一式工事以外の建設工事の場合は

  • 1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)

となっております。

ということは、上記の金額を超すような建設工事を行う予定がない方であれば、建設業許可を取得する必要はないという事ですね。

請負代金の注意点

軽微な工事の請負代金について解説を行いましたが、その請負代金についての注意点を補足しておきます。
建設業法施行令の中には

注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。

と記されています。
契約の中には発注者側で工事に必要な材料を提供することもありますから、注文書の額が500万円ギリギリだった場合には実は請負代金が500万円を越してしまっていて軽微な工事に当てはまらず、建設業許可が必要な工事だったという危険もありますので注意をしましょう(材料の価格は市場価格で判断することになります)。

そう聞くと「じゃあ、契約を別々に結べば危ない橋を渡らなくて済むのでは?」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、工事の完成を2つ以上の契約に分割して請け負う場合、各契約の請負代金を合計した額で判断されることになりますので、その方法は使うことができません。

29業種の建設工事について

それでは次に29種の建設工事の種類についても触れていきます。
宮城県の建設業許可の手引きでも下記のように記されていますので、これから取ろうとしている建設業許可がどの分類に当てはまるのかを参考にしていただければと思います。

建設工事の種類建設業の種類内容例示
土木一式工事土木工事業総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修,改造又は解体する工事を含
む。以下同じ。)
トンネル工事,橋梁工事,ダム工事,護岸工事などを一式として請負うもの。そのうちの一部のみの請負は,それぞれの該当する工事になる。
建築一式工事建築工事業総合的な企画,指導,調整のもとに建築物を建設する工事建物の新築工事,増改築工事,建物の総合的な改修工事等,一式工事として請負うもの。(建築確認
を必要とするもの。)
大工工事大工工事業木材の加工又は取付けにより工作物を築造し,又は工作物に木製設備を取付ける工事大工工事,型枠工事,造作工事
左官工事左官工事業工作物に壁土,モルタル,漆くい,プラスター,繊維等をこて塗り,吹付け,又ははり付ける工事左官工事,モルタル工事,モルタル防水工事,吹付け工事,とぎ出し工事,洗い出し工事
とび・土工・コンクリー
ト工事
とび・土工工事業イ  足場の組立て,機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置,鉄骨等の組立て等を行う工事
 くい打ち,くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
  土砂等の掘削,盛上げ,締固め等を行う工事
  コンクリートにより工作物を築造する工事ホ その他基礎的ないしは準備的工事
 とび工事,ひき工事,足場等仮設工事,重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事,鉄骨組立て工事,コンクリートブロック据付け工事
 くい工事,くい打ち工事,くい抜き工事,場所打ぐい工事
  土工事,掘削工事,根切り工事,発破工事,盛土工事
 コンクリート工事,コンクリート打設工事,コンクリート圧送工事,プレストレストコンクリート工事
 地すべり防止工事,地盤改良工事,ボーリンググラウト工事,土留め工事,仮締切り工事,吹付け工事,法面保護工事,道路付属物設置工事,屋外広告物設置工事,捨石工事,外構工事,はつり工事,切断穿孔工事,アンカー工事,あと施工アンカー工事,潜水工事
石工事石工事業石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し,又は工作物に石材を取付ける工事石積み(張り)工事,コンクリートブロック積み(張り)工事
屋根工事屋根工事業瓦,スレート,金属薄板等により屋根をふく工事屋根ふき工事
電気工事電気工事業発電設備,変電設備,送配電設備,構内電気設備等を設置する工事発電設備工事,送配電線工事,引込線工事,変電設備工事,構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事,照明設備工事,電車線工事,信号設備工事,ネオン装置工事
管工事管工事業冷暖房,空気調和,給排水,衛生等のための設備を設置し,又は金属製等の管を使用して水,油,ガス,水蒸気等を送配するための設備を設置する工事冷暖房設備工事,冷凍冷蔵設備工事,空気調和設備工事,給排水・給湯設備工事,厨房設備工事,衛生設備工事,浄化槽工事,水洗便所設備工事,ガス管配管工事,ダクト工事,管内更生工事
タイル・れんが・ブロック工事タイル・れんが・ブロック工事業れんが,コンクリートブロック等により工作物を築造し,又は工作物にれんが,コンクリートブロック,タイル等を取付け,又ははり付ける工事コンクリートブロック積み(張り)工事,れんが積み(張り)工事,タイル張り工事,築炉工事,スレート張り工事,サイディング工事
鋼構造物工事鋼構造物工事業形鋼,鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事鉄骨工事,橋梁工事,鉄塔工事,石油・ガス等の貯蔵用タンク設置工事,屋外広告工事,閘門・水門等の門扉設置工事
鉄筋工事鉄筋工事業棒鋼等の鋼材を加工し,接合し,又は組立てる工事鉄筋加工組立て工事,鉄筋継手工事
舗装工事舗装工事業道路等の地盤面をアスファルト,コンクリート,砂,砂利,砕石等により舗装する工事アスファルト舗装工事,コンクリート舗装工事,ブロック舗装工事,路盤築造工事
しゅんせつ工事しゅんせつ工事業河川,港湾等の水底をしゅんせつする工事しゅんせつ工事
板金工事板金工事業金属薄板等を加工して工作物に取付け,又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事板金加工取付け工事,建築板金工事
ガラス工事ガラス工事業工作物にガラスを加工して取付ける工事ガラス加工取付け工事,ガラスフィルム工事
塗装工事塗装工事業塗料,塗材等を工作物に吹付け,塗付け,又ははり付ける工事塗装工事,溶射工事,ライニング工事,布張り仕上工事,鋼構造物塗装工事,路面標示工事
防水工事防水工事業アスファルト,モルタル,シーリング材等によって防水を行う工事アスファルト防水工事,モルタル防水工事,シーリング工事,塗膜防水工事,シート防水工事,注入防水工事
内装仕上工事内装仕上工事業木材,石膏ボード,吸音板,壁紙,たたみ,ビニール床タイル,カーペット,ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事インテリア工事,天井仕上工事,壁張り工事,内装間仕切り工事,床仕上工事,たたみ工事,ふすま工事,家具工事,防音工事
機械器具設置工事機械器具設置工事業機械器具の組立て等により工作物を建設し,又は工作物に機械器具を取付ける工事プラント設備工事,運搬機器設置工事,内燃力発電設備工事,集塵機器設置工事,給排気機器設置工事,揚排水機器設置工事,ダム用仮設備工事,遊技施設設置工事,舞台装置設置工事,サイロ設置工事,立体駐車設備工事
熱絶縁工事熱絶縁工事業工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事冷暖房設備,冷凍冷蔵設備,動力設備又は燃料工業,化学工業等の設備の熱絶縁工事,ウレタン吹付け断熱工事
電気通信工事電気通信工事業有線電気通信設備,無線電気通信設備,放送機械設備,データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事有線電気通信設備工事,無線電気通信設備工事,データ通信設備工事,情報処理設備工事,情報収集設備工事,情報表示設備工事,放送機械設備工事,TV電波障害防除設備工事
造園工事造園工事業整地,樹木の植栽,景石のすえ付け等により庭園,公園,緑地等の苑地を築造する工事植栽工事,地被工事,景石工事,地ごしらえ工事,公園設備工事,広場工事,園路工事,水景工事,屋上等緑化工事,緑地育成工事
さく井工事さく井工事業さく井機械等を用いてさく孔,さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事さく井工事,観測井工事,還元井工事,温泉掘削工事,井戸構造工事,さく孔工事,石油掘削工事,天然ガス掘削工事,揚水設備工事
建具工事建具工事業工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事金属製建具取付け工事,サッシ取付け工事,金属製カーテンウォール取付け工事,シャッター取付け工事,自動ドアー取付け工事,木製建具取付け工事,ふすま工事
水道施設工事水道施設工事業上水道,工業用水道等のための取水,浄水,配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事取水施設工事,浄水施設工事,配水施設工事,下水処理設備工事
消防施設工事消防施設工事業火災警報設備,消火設備,避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し,又は工作物に取付ける工事屋内消火栓設置工事,スプリンクラー設置工事,水噴霧,泡,不燃性ガス,蒸発性液体又は粉末による消火設備工事,屋外消火栓設置工事,動力消防ポンプ設置工事,火災報知設備工事,漏電火災警報器設置工事,非常警報設備工事,金属製避難はしご,救助袋,緩降機,避難橋又は排煙設備の設置工事
清掃施設工事清掃施設工事業し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事ごみ処理施設工事,し尿処理施設工事
解体工事解体工事業工作物の解体を行う工事工作物解体工事
※ 各種類の詳細については別の機会に解説を行っていきます。

上記の29業種が建設業許可の対象となりますので、それ以外の建設工事しか行わない場合は建設業許可を取得しなくても問題がないという事になります。
対象とならない工事の例を挙げてみると

  • 産業廃棄物等の収集、運搬業務
  • 樹木の剪定、除草、抜根、伐採
  • 道路維持管理業務委託
  • ビル清掃などの清掃業務
  • 自社施工
  • 船舶や航空機など、土地に定着しない動産の築造、設備機器取付
  • 工事現場で作業に従事する人員の供出(いわゆる人工出し、常備契約、応援)
  • 建設機械リース(オペレーターが付かない)
  • 除雪
  • 測量、設計、地質調査
  • 電気設備・消防施設・機械設備の保守点検業務
  • 消耗部品の交換

などが挙げられます。


都道府県知事許可・国土交通大臣許可について

建設業許可には都道府県知事による許可と国土交通大臣による許可の2種類があります。

都道府県知事許可

一つの都道府県内にだけ営業所をもって営業をする場合に必要となる許可

という事になります。
初めて建設業許可を取得する場合は、何か所にも営業所を設置しているというのは稀なパターンになりますので、多くの場合はこちらの都道府県知事許可の取得を目指すことがほとんどになります。

国土交通大臣許可

二つ以上の都道府県に営業所を持ち、営業する場合に必要となる許可


例えば宮城県に営業所を一つ、そして福島県にも営業所を持つといった場合に国土交通大臣許可が必要になります。
たまに『営業所を設置している都道府県を出て建設工事を行う場合には国土交通大臣許可が必要』『複数箇所に営業所を設置しているから国土交通大臣許可が必要』と誤った理解をしている方がいらっしゃいますが、都道府県知事許可と国土交通大臣許可の違いはあくまで営業所の設置場所の違いだけになりますので誤解のないようにしましょう。

営業所について

都道府県知事許可と国土交通大臣許可の違いは営業所の設置場所の違いだけとお話をしましたが、建設業法でいう営業所についても触れておきます。

営業所とは、本店、支店、常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいい、少なくとも下記の要件を備えているものをいいます。

  1. 請負契約の見積り、入札、契約締結等の実態的な業務を行っていること。
  2. 電話、机、各種事務台帳等を備え、居住部分等とは明確に区分された事務室が設けられていること
  3. 建設業の経営経験を有する役員等(建設業法施行規則第7条第1号の要件を満たす者)又は建設業法施行令第3条の使用人(請負契約の見積もり、入札、契約締結等の実態的な業務に関する権限を付与された者)が常勤していること
  4. 専任技術者が常勤していること。

となっております。
建設業許可の申請をする際に営業所の風景を提出する必要がありますが、それは上記の特に2の要件を満たしているか確認するためになりますね。


特定建設業と一般建設業について

建設業許可には、先ほど解説をした「都道府県知事許可」「国土交通大臣許可」の他に特定建設業と一般建設業の区分があります。
一般建設業と特定建設業の違いは、元請の立場で請負った建設工事の金額になります。

特定建設業

特定建設業は、発注者から直接請負った建設工事(元請工事)について、下請代金の総額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる下請け契約を締結しようとする場合に必要となります。

一般建設業

特定建設業の許可を受けようとする方以外が該当してきます。
つまり、元請工事について下請代金の総額が4,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上となる下請け契約を締結しない場合や下請けとしてだけ営業しようとする場合は一般建設業で問題がないということになります。

そして一般建設業の補足ですが、特定建設業はあくまで「下請代金の総額が4,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上となる下請け契約を締結する場合」に必要になるわけなので受注する金額自体に制限はありません。
どういうことかというと、仮に1億円の工事を受注してとしてもその工事のほとんどを自社で施工して、下請代金の総額が4,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上とならなければ一般建設業でも問題がないということになります。


許可の有効期間

許可の有効期間は、許可のあった日から5年目の許可日に対応する日の前日までが有効期間となります。
つまり2024年9月1日に許可を受けた場合であれば、2029年8月31日までが有効期間となるということですね。

有効期間の最終日が休日の場合は?

有効期間満了後も引き続き建設業許可を有効なものとするためには許可の更新が必要となりますが、日曜等の休日は行政庁は開いておりません。
ということは有効期間の最終日が休日の場合はその休日明けまでに延長されるのでは?と思われる方もいらっしゃいますが、残念ながらこのような場合でも許可のあった日から5年目の許可日に対応する日の前日までが有効期間であることに変わりはありません。
宮城県のウェブサイトにも『引き続き許可を受けて営業する場合には、従前の許可の有効期間が満了する30日前までに更新の申請を行う必要があります。』と記載されていますので、余裕をもって更新の準備を行うようにしましょう。


まとめ

今回は建設業許可の入門編的な位置づけとして建設業許可について解説を行っていきました。
今後も皆様のお役に立つような情報を定期的にアップしていきますので、次回以降のコラムも是非、お読みいただけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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